中日の四銃士

与田監督が2019年から指揮を執ることになり、伊東ヘッドコーチ・中村バッテリーコーチ等々の就任も決まってから早くも1年が経とうとしている。

2012年~2018年までの焼け野原に等しいチーム状況を考えれば「ようやっとる」以外の言葉がないくらい2019年の中日ドラゴンズは5位という位置にいながらも健闘している。それは昨日の勝利で9試合を残しながらも昨年の勝利数を超えたことからもわかるだろうし、自力CSの可能性が残っていることからも言えるだろう。

さて今シーズン始まる前に前述した2人のコーチから出た言葉は以下の通りだった。

「勝てる捕手を探す」

この言葉だけでいかに昨年までのチーム状態が酷かったかがわかるだろう。2002年~2013年の谷繁以来、中日には「扇の要」が定まってなかった。扇の中心が定まってない扇子がもろいように、中日もかなり弱くなっていた。

そして捕手探しの旅が始まって約1年、現在の中日は4人の捕手が1軍に帯同している。石橋・大野・加藤・木下の4人である。ただその4人の中で昨年から1軍にある程度いたのは大野奨太だけである。つまり残りの3人は実質前述した目標に沿って新たに集められたのである。

この4人の捕手について今日は軽く述べていこう。

まずは加藤匠馬。

彼こそがまさに勝てる捕手探しによって「発掘された」人材だろう。昨シーズンまでの試合出場はわずか5試合。ほぼ埋もれかけていた加藤が注目されたきっかけはその肩の強さだった。単純な自肩ならソフトバンクの甲斐をも凌ぐと言われた強肩はオフシーズンからファンをにぎわせ、「加藤バズーカ」なる言葉を生み出し、開幕スタメンにも抜擢された。

一方、彼は肩以外の捕手に必要な要素がほぼなかった。配球は伊東ヘッドからの指示、捕球はお粗末、打撃は力不足というなかなかな状況であった。それもあって7月7日に1軍登録を抹消されてしまう。

しかし、8月4日に再昇格すると、その後はリード・守備・打撃で成長した姿を披露し、来年以降への期待もまた一段と高まった。

 

次は大野奨太

2017年オフに中日にFAでやってくるも、2018年は肘の状態の悪化等もあり、満足にいかないシーズンを過ごした。そのため今シーズンは再起を図る年になった。

日ハム時代に「栄光をつかんだ男」であり、WBCへの出場歴もあるという、一番「勝てる捕手」に近い存在でファンからの期待も大きかったが、今シーズンも序盤はなかなか出場を果たせず、1軍登録抹消という悔しい経験を再びしてしまう。

しかし8月25日に再昇格を果たすとここからは流石の経験で投手を引っ張り、課題の打撃も少し上向きに。「勝っていた捕手」としての貫禄を見せつけつつある。

 

次は木下拓哉

彼は昨年まで、中日の捕手らしくない長打力を売りにちょこちょこ試合に出るも、なぜか知られずに抹消ということが多かった。

それが今年は開幕1軍入りも果たし、加藤が一度2軍行きを命じられてからほぼレギュラーとして扱われるというかなりのステップアップ。

しかし魅力である長打力よりもリードや守備面での不安が露呈し、あえなく2度目の1軍登録抹消となってしまった。

それでも先日再び1軍登録されると昨日の山本の快投を引き出し、期待のバッティングでも4打数2安打2打点と結果をいきなりだし、正捕手争いに加わることになった。

 

最後は石𣘺康太。

彼は何といっても去年のドラフト4位で指名されたばかりのルーキーである。個人的には3位じゃないと取れないと思っていただけにかなりお得感ある4位であった。 

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そしてその予感通り、シーズン開幕直後から2軍でルーキーとは思えない実力を発揮する。

加藤に匹敵する強肩、高校生離れしたキャッチングとリード、ナゴヤ球場でのホームランと今年から2軍戦をネットで見られるようになったことを最大限利用するかのような活躍っぷりを見せつける。

そして加藤と入れ替わりで待望の1軍昇格を果たすと初打席で死球を勝ち取るという運の良さ。その2日後に初先発マスクを果たすと、第3打席に貴重な2点タイムリスリーベースを放つという「何か持っている男」としてファンに強烈な印象を与えた。

その後は抹消されたり、なかなか出場機会がなかったり、結果が残せなかったりとプロの壁にぶつかっている様子だが、伊東ヘッド&中村バッテリーコーチの英才指導を1年目から受けられるという特権を活かして来年には急成長するかもしれない。

 

さて、この4人の捕手による正捕手争い。「フェアな争いこそがチーム力向上には不可欠だ」という趣旨の言葉をサッカーの元日本代表監督・オシム氏は残していたが、まさにこの中日キャッチャー陣の争いを表しているようだ。物心ついた時からファンをやっている自分ですら明日のスタメンが読めないというくらいの激戦であるが、それこそが「勝てる捕手」を育てる1番の方法なのかもしれない。